昔、中国によく行っていた時の思い出話です。
今回は私も経験した転職について中国では?という話です。
私が前に勤めていた会社では製品の生産委託を海外(主に中国)の企業にお願いしていました。
それも1社ではなく何社もありました。
私が担当している製品でも委託先が複数あり、その中でも主力製品については技術的に安心できる2社に生産が集中している状況でした。
その2社を大まかに説明すると
A社:規模が大きく高い技術力を持っている。
B社:規模は小さいが小回りが利き、私の会社の意向を尊重してもらえる。
といった感じです。
A社は規模が大きすぎて何かと融通が利きません。出来ればB社に絞り込みたいのですが規模的にこれ以上取引を増やすのはリスクが高い。
何とかA社をなだめ透かしながら第3のメーカー(できればB社くらいの規模)を探すようにとの指示が会社から出ていました。
探すこと2年ほど。。。10社くらいは調査したり直接訪問したりしたでしょうか。
そんな時C社という会社から売り込みがありました。
C社は設立されたばかりの新興企業でしたが、A社を退職した元従業員が独立して設立した会社でした。A社で主に私の会社の対応窓口になっていた人物でしたので私もよく知っています。
その縁で売り込みをしてきたようです。
そういう事ですので、技術的にはA社の系統を引き継いでいます。会社の規模としてはB社と同じ程度。
我々の希望に合っています。そこで、現地を訪問し視察をすることにしました。
行ってみると、結構立派な工場です。独立した方はC社の総経理(社長)となっていました。
まずは、久しぶりに会いましたので世間話を少ししつつ、現在の経営状況を探ったりしていました。どうやら大口の得意先を持っている様で売り上げ規模はそれなりになっています。ですが、やはり日本のメーカーと取引しているという実績があればもっと信用が得られるのでぜひ取引したいという話でした。
ただ、私としては総経理が元A社だからと言ってC社が信頼できるかどうかは判りません。
経営状況は専門の調査会社に頼むとして、その他の重要な部分・・・「技術的に私たちの要求を満たすことが出来るのか、品質は安定しているのか」ということを確認しなくてはいけません。
そのためには、サンプルを評価したり、製造工程を監査したり、品質管理体制を確認したり。。。多くの確認事項があります。それらを丹念に確認することにしました。
そうしていると判ってきたことは。。。
・技術的に重要な製品開発・設計のマネージャー
・製造工程の管理のキーマンである製造マネージャー
・品質管理マネージャー
全て見たことがある顔です。
C社の主要なメンバーほとんどがA社出身でした。これには驚きました。
私自身、彼らはA社時代からそれなりに信用できるなと思っていたので安心できたのですが、逆に心配な点もありました。そこで質問です。
「これって、引き抜きじゃないんですか。後々トラブルになりませんか」
身内が独立して起こした会社(しかも結構社員が引き抜かれている)と我々が取引してA社の社長が激怒しないか心配です。
すると、C社の総経理は涼しい顔で言いました。
「引き抜いたわけではない。皆A社の待遇に不満を持ち別々に退職している。たまたま彼らが応募してきたので採用した。問題は無い。」
。。。本当でしょうか。日本なら大ごとになりそうです。
ですが結果的には問題なくA社からC社への委託先変更は進めることが出来ました。
A社の社長も最初は文句を言っていましたが、我々のせいではないと割り切っていたようで、大きなトラブルにはなりませんでした。
しかし、それ以降も次から次へと転職者が増えていきます。中にはA社からB社をへてC社に転職してきた人もいました。これを見たときは苦笑いをするしかありませんでした。
中国では日本と違って頻繁に転職する事は聞いていました。ですがここまであからさまに同業他社に転職するとは驚きです。
しかし、そのおかげで私としては会社から指示されていた第3のメーカーを無事に見つけることが出来て有り難い出来事ではありました。
中国の転職事情恐るべしです。まあ結果オーライですが。
ちなみに、A社で「こいつはダメだな」と思っていた人はC社では見かけませんでした。
聞いてみると「応募してきたが採用しなかった」とのこと。
この話を聞いてよりC社が信頼できると当時感じたことを覚えています。
こういった色んなエピソードのある中国との仕事の日々。。。今では懐かしい思い出になっています。
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