長年勤めた会社を早期退職し、さてどうしたものかと身の振り方を考えた時に海外で再就職するという選択肢もあります。
日本国内で転職活動する場合、前の会社の看板が大きいほど中小企業は採用に二の足を踏んでしまうことがあるそうです。
今、お世話になっている会社の社長もそのような事を言っていました。
ですが、この看板が海外では有効になることもあります。
海外と言っても先進国ではありません。
中国を始めとした新興国です。
こういうことを書くと日本の優れた技術を学ぶための採用と思われるかもしれません。
実際そういったケースもあるとは思いますが、少し採用目的が違います。
その理由は。。。
営業活動目的の採用です。
「日本人の指導を受けて品質は万全ですよ」というPR目的です。
私は以前の職場では製品の海外製造委託を担当していました。
主に中国・台湾あたりに行っていました。
とにかく有望な委託先があれば手当たり次第に行っていました。
その数50社程度は行ったでしょうか。
そうして実際に十数社とは取引を行いました。
そうやっていろいろな会社を回っていると、日本人に出会うことがあります。
その業界で中堅より少し規模が大きいという会社でよくありました。
現地を訪問し、工場を視察していると年配の男性がふらりと現れます。
何度かすれ違うのですが、特に何か社員に指示をするわけでもありません。
こうなると、こちらも気になってきます。
そのタイミングで相手の会社から紹介されます。
「この人は元〇〇(日本の有名企業)に勤めておられて最近私どもの会社に来ていただいた顧問の方です。」
「色々と技術指導をしていただいています」
などと紹介されます。
その人の傍らには通訳兼秘書らしき人が寄り添っています。
その時私はのんきに「VIP待遇で迎えられていていいな」と思っていました。
実力のある人はこういった道もあるんだなと。
しかし、それにはウラがありました。
真相が判ったのは、こことは違う会社と取引した際に、その会社が我々のために日本語が出来る社員を雇ってくれた時です。
その会社は決して大きな会社ではありません。
ですが、その社員の方は非常に優秀な方でした。
聞けば以前はもっと大きな会社に勤めていたとのこと。
給料もこの会社より相当高かったそうです。
そんな良い会社を何故やめたのか不思議に思い聞いてみるとその答えは
「退屈で仕事が面白くなかったから」
でした。
詳しく聞いてみると、前の会社では日本人の社員に付いて通訳兼秘書をしていたそうです。
その日本人社員は日本の有名企業出身。前に私が出会った方と同じような感じです。
その仕事の内容が驚きです。
朝に出社してきて、まず会社内を巡回。
その後、自室(個室が与えられていたそうです)でデスクワーク。
昼食後、会社内を巡回
その後自室でデスクワーク。
実際はデスクワークと言っても特に何かしているわけではなかったそうです。
そうなると秘書兼通訳はすることがありません。
だから、面白くなくて辞めましたとのことでした。
その時に「なるほど!」と思いました。
以前出会った、あの日本人は私たちにPRするために現れたのかと。
確かに元いた会社が日本の有名企業だと聞いた方は「おっ」となります。
人によってはこの会社は日本人が常駐して指導しているのなら安心だと思うかもしれません。
こういう雇われ方もあるのかと目からうろこでした。
考えようでは、おいしい仕事です。そこに居るだけで給料が頂けます。
私も早期退職した時にこれに近いオファーを頂きました。
非常にありがたいのですが、私は異国の地で仕事もせずに過ごすなんて辛いです。
そこは丁重にお断りし、日本で転職活動をすることにしました。
その後の悪戦苦闘は以前記事にしたとおりです。
大きな会社を退職し、転職に苦労している方。
色んな意味で足かせとなっている退職した会社の看板。
それが考えようによっては武器にもなるという事例でした。
コメント