出向という言葉、大抵の方は聞いたことがあると思います。
例えば親会社から子会社に出向するだとか、銀行員なら融資先の会社に出向するなどです。
私自身は出向の経験はないのですが、以前勤めていた会社では親会社からの出向を受け入れたこともありますし、同僚が関係会社へ出向するなんてこともありました。
この出向という言葉ですが、あまり良いイメージはありません。出世というよりはどちらかというと左遷に近いイメージです。(個人の感想です。)
実際には経営立て直しや新規事業立ち上げのためにやり手の社員が出向してくるということもあるとは思います。
しかし、過去の私がこれまでに見てきた出向はあまりポジティブなイメージはなかったです。
「ああ、この人はかなり親会社で扱いに困ったんだろうな。」
という感じです。
そんな出向ですが、基本的には会社間で何らかの関係(親子だとか取引があるとか)があり成されるものだと思っていました。しかし、もっと切実な出向も世間にはあるようです。
今回はそんな経験談です。
ある週末。久しぶりに友人と呑んでいた時の話です。
その友人たちは私を含め勤め先は違います。ですので、定番の近況報告から会話は始まりました。
友人A「実は今度、○○というところから社員が出向してくるらしいわ。」
○○というのは名前を聞けば誰でも知っている世界的に有名な会社です。
私「へー、それはすごいなぁ。お前の会社って○○と関係あったっけ」
友人A「いや、まったく関係はないんやけど、転職支援会社からの紹介らしいわ」
その出向予定の人物は有名な大学の大学院卒らしく、友人Aが勤めている会社では逆立ちしても採用できるような人材ではないそうです。
そんな一見おいしい話に会社の上層部は相当前のめりになり、すぐにでも契約する勢いだとか。
...と、そこまで黙っていた友人Bがおもむろに口を開きました。
友人B「その人ってもしかして村下さん(仮名)?」
友人A「えっ!なんで知ってんの?」
友人B「やっぱり。。。実はその人先月までうちの会社に出向してきてた人やわ」
友人A・私「えーっ!」
「それは奇遇だなー」(笑)で済ますことができないこの話。
友人Bに詳しく話を聞いてみると、どうもその出向者の村下さん(仮名)はいわくつきの人で、いろんな会社を出向という形で転々としているようです。
友人Bの会社でも大手企業の社員で学歴も申し分ないということで喜んで出向を受け入れたそうです。しかし実際には仕事はできないわ、周りに迷惑をかけまくるわで1年の契約が終わると同時に契約を延長することなくお引き取りいただいたそうです。
そうして元の会社に復帰してすぐに別の会社に出向しようとしている村下さん(仮名)。
どうやら出向のたらい回しにあっているようです。
友人Aの会社とBの会社は特に関係があるわけではありません。
そんな関係のない会社にまで来ているということは恐らく沢山あるであろう自社のグループ会社などでは受け入れは無理だったのかな?そうだとしたらどんだけ仕事できないんだ?といらない想像もしてしまいます。
この出向受け入れのオファーについて、事実を知った友人Aは現在必死で受け入れ拒否を訴えているようですが、上層部にはその悲痛な訴えは届かないようでかなり厳しい状況だそうです。
何せ先方の背負っている看板がデカすぎです。それに目がくらんだ上層部を責めることはできないでしょう。
「もし、村下さん(仮名)がうちに来たら面倒見るのは俺やのに!」
ご愁傷様です。
こうして未だ友人Bの中では予断を許さない出向話ですが、これを聞いた私は出向ってこんな形があるんだとある意味感心しました。(他人事なので冷静)
自社で扱いに困った従業員でも立派な看板を駆使することで、今まで関係がなかった会社でも出向させることが可能。しかも相手も喜んでくれるという一見WIN-WINの制度です。(実際はWINではないようですが)
でも実際出向させられている村下さん(仮名)はどんな気持ちなのでしょうか?
有名大学を出て、一流企業に就職しているわけですからそれなりのプライドは持っていると想像できます。
それなのに、グループ企業でもなく社名など聞いたこともない中小企業を転々とさせられている自分の境遇。
私などは、これは会社側からの無言のメッセージかもしれないなあと勘ぐってしまいました。
「君はわが社では戦力外だよ。判ってるよね。。。」
まあ、本人はそれとなく察しているのかもしれませんが。我慢比べですね。
しかし、出向という衣をまとったかなり非常な仕打ちをこんな場で聞くことになろうとは。
ちょっと背筋(と首筋)が冷たくなった呑み会でした。
コメント