最近、日本の名だたる企業を舞台に検査データ改ざんというよからぬことが明るみに出てきています。
もちろんいけない事ではあるのですが、皆さん思うのが「こんな大企業がなぜ、不祥事に手を染めるのか?」という事ではないでしょうか。
そこで、この不合格の製品を合格と装って出荷してしまったという事態の裏側を勝手に考察してみたいと思います。
どの様な製品であれ、その製品を製造する場合、品質に問題ないかどうかについてメーカーは検査を行い確認します。
その様な検査をする場合は、検査した製品が合格か不合格かを判定するため何らかの規格を設ける必要があります。
この規格は製品の寸法だったり、強度や電気的な測定値など製品によって様々です。
で、その規格ですがどのように決められているのでしょうか。
規格としてよく耳にするのはJIS規格です。
JIS規格では日本で製造される多くの工業製品についての基準が設けられています。
公的な規格ですので日本で製品を製造している場合、当然この規格を守らないといけません。(例外もありますが)
また、製品を製造する場合、工業製品は大量生産されますので、個々の製品はある程度製造上のばらつきが出来てしまいます。
その為、メーカーでは合格か不合格かを判定する基準値はJISなどの公的な基準より厳しく設定するのが一般的です。
少々ばらつきが大きくなってもJISは逸脱しない様にという考え方です。(もちろんJISに決められた品質以上の製品を目指すという目的もあります)
この公的な基準と社内の基準というダブルスタンダードが判断を鈍らせることがあります。
例えばこんな具合です。
1)問題のない基準緩和
ある時生産した製品を検査したところ、社内の基準から外れていました。
不合格です。
しかし、社内基準から外れているもののJISの規格は満たしています。
この場合どうするでしょうか。
①社内基準を外れているのだから不合格。修理もしくは廃棄。
②社内基準からは外れているもののJIS規格は満たしている。実用上問題ないので「特別採用」として合格、出荷する。
これ、どちらでも問題ありません。ただし、特別採用(特採といいます)にする場合は合格と判断した根拠などを正式に記録に残していれば、ですが。
これは良く耳にする国際認証規格のISO9000でも認められています。
ですので、このような特採というのはそれほど珍しくなく、もしかしたら製品によっては日常になっている可能性はあります。
これが一つ目の感覚麻痺です。(社内規格を外れても救い上げが出来るという麻痺)
2)規格の曖昧さ
それともう一つは基準を外れた製品が本当に使えないのか?というものです。
例えば基準値が100で規格の幅が±10という製品があるとします。
この規格から測定値90~110までの範囲が合格です。
製品Aを測定した結果110でした。基準ギリギリ合格です。
製品Bを測定した結果110.5でした。不合格です。
この時ジレンマが襲ってきます。
製品Bは基準から外れていますが合格したAとの差は僅か0.5しかありません。
それに対して合格したAは基準値100からは10も外れています。
AとBの差は僅かだし、10も基準から外れているAとそのAから0.5しか差が無いBで品質上合否を分けるほどの大きな差はあるのか。本当にBは使えないものなのか?
この程度の逸脱なら合格としても良いのでは。。。というものです。
しかもBと同じものが何万個も出来てしまっていたとしたら。
もし、原則通りに不合格として廃棄した場合1個数十円としても単純計算で数十万円の損失が発生します。
それ以外にも再生産など工程の混乱も発生するでしょう。
これをイチ担当が判断するのはかなりのプレッシャーです。
少し目をつむれば丸く収まる。そう思っても不思議はありません。
しかも1)の例のように社内規格を外れてもJISに入っていればOKというようなことがあれば規格の重要さが現場サイドでは曖昧になってしまう可能性があります。
こうして、最初は「厳しい社内規格を外れているだけだから大丈夫」から気が付けば絶対に守らなければならないJISなどの基準(客先との取り交わした基準もそうです)を逸脱した製品を合格としてしまっていた。
その結果取り返しがつかなくなってしまった。
これは私が勝手に推測したことではありますが、こんなことが絶対に無いと言い切れる企業の方が少ないのではないでしょうか。
それと、このように書いてしまうと現場サイドのみが悪い印象になっ
てしまいますが、それは全く違います。
てしまいますが、それは全く違います。
製品の実力との差が大きいのに、無理やりJISより厳しい社内基準を設けているのがそもそも問題です。
「うちはJISより厳しい基準で製造しているので、他社より優秀ですよ」
と実力も知らずに上層部が宣伝していれば、末端の社員がそれを正すのは難しいのではないでしょうか。
繰り返しますが、データねつ造はやってはいけないことです。
ただ、これら不祥事が現場の責任と決めつけるのはどうかなと個人的に思います。
末端になればなるほど追いつめられるので一歩間違えると、どこの会社でもこうなる危険はあるのではないかなと思い、少し裏側を想像(妄想かな)してみました。
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